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2016年12月17日土曜日

2016.12.12第8回口頭弁論期日報告

2016.12.12
2016年12月12日第8回口頭弁論期日の報告

弁護団長  井 戸 謙 一

1 原告側は、準備書面(20)(22)を提出しました。その内容は、次のとおりです。
(1) 準備書面(20)【親子裁判関係】
9人の原告の陳述書の内容を踏まえ、国や福島県の不作為と子どもたちが無用な被ばくをしたことの因果関係を主張するもの
(2) 準備書面(21)【子ども人権裁判関係】
ア 被告自治体の主張に対する原告の次のような反論を記載したもの
() 「安全な環境で教育を受ける権利」の発生根拠は、被告自治体の子どもたちに対する安全配慮義務である。そして、子どもたちの安全配慮を求める権利は、憲法26条、教育基本法、学校教育法、学校保健安全法に由来する。
() 「現在の学校施設での教育を差し止める権利」の根拠は、子どもの健康を中核とする人格権である。
  イ 被告自治体らの主張は、原告が低線量被曝の危険性の根拠とする次のような事実(日本の法律が、一般公衆の被ばく限度を年1ミリシーベルトと定めていること、日本の法律が放射性セシウムによる表面濃度4万ベクレル/㎡を超える環境を放射線管理区域として厳しい規制をかけていること、累積5ミリシーベルトの被ばくで白血病の労災認定がなされた事例があること、原爆症の認定基準では、1ミリシーベルト以上の被ばくをしたと考えられる人で、一定の類型の疾病に罹患した人は、原爆症と認定されること等)に対して、これらの事実は、低線量被曝による健康被害とは関係がないと主張するのみで、それ以上の具体的な主張をしていないので、これに対する具体的な理由を述べるように求めました。その他、多くの求釈明(相手方に説明を求めること)をしました。
(3) 準備書面(22)【子ども人権裁判、親子裁判とも】
内部被ばくの危険性について述べ、それゆえに、被ばくによる危険性は、空間線量によって判断するのではなく、土壌汚染濃度をより重視するべきことを述べたもの

2 被告の主張
 (1) 被告国
ア 第4準備書面【親子裁判】
いわき市民訴訟の原告ともなっている原告について、二重起訴にあたる(同じ請求を複数の裁判でしている)として、却下を求めるもの
イ 調査嘱託の申立て
東京電力ホールディングス株式会社に対し、各原告に支払った損害賠償額について回答を求めるもの
 (2) 被告福島県の準備書面(9)【親子裁判】
   被告福島県については、スピーディ情報や線量情報を県民に提供するべき法的義務はない、安定ヨウ素剤の服用指示について、国の見解に従ったことにし違法はないとするもの
(3) 被告いわき市の準備書面(8)
いわき市は、線量が下がり、既に1ミリシーベルト/年を下回っているとすること等を主張するもの

3 原告の意見陳述
  今回も2名の原告が意見陳述をしました。
家族で長野県に避難しているお父さんは、経済的にも肉体的にもぎりぎりの生活だが、子どもを守るためにこの道を選んだことを述べ、言いたいことの10%も話せていないけれど、裁判官や被告側の代理人に対し、人の子の親として考えてほしいと訴えました。初めて信州の公園で遊ばせようとした子どもたちが、「お花触っていいの?」「マスク外していいの?」と聞いてくるのを見て、子どもたちに大変な我慢をさせてきたことに気づき、夫婦で涙を流したという話に胸が詰まりました。
県内に住んでいるお母さんは、体調不良で裁判所に出頭できず、他のお母さんが代読しました。情報が知らされなかったために子どもたちを被ばくさせてしまった無念、根拠のない安全宣伝のために、人と人が分断され、親子の間ですら溝ができてしまうことのつらさを訴えられ、しかし、子どもの健康を守るために親として闘うのだという凛とした決意がみなぎる陳述でした。

4 この裁判は、長期低線量被曝の健康に対する危険性の有無、程度が第一のテーマです。この点について、被告の国、福島県らは形式的な反論しかしてきていません。早期に実質的な反論をさせて、議論を深めていくことが今後の主たる課題になると思われます。
引き続き、ご支援をお願いいたします。

準備書面(21)・(22)

12月12日の第8回口頭弁論に先立ち提出した書面です。

原告準備書面(21)-被告基礎自治体の本案の主張に対する反論-

原告準備書面(22)-内部被ばくについて被告らの主張に対する反論-

なお、準備書面(20)は、原告の個人情報が記載されておりますので、公開を控えております。


裁判記録には,これまでの記録を載せています。

2016年10月27日木曜日

平成28年10月12日(第7回口頭弁論期日)での活動の様子

20161012 UPLAN【後半・弁護団報告、地裁前集会、記者会見、意見交換会】弁護団「これまでの進捗状況と本日の争点」他  


準備書面(17)・(19)

10月12日の第7回口頭弁論に先立ち提出した書面です。

準備書面(17) -被告福島市の答弁書への反論-

原告準備書面(19)-疫学調査結果-

なお、準備書面(18)は、被告国及び県の違法行為と原告に生じた損害との個別の因果関係を主張するもので、原告毎の個人情報が含まれますので、公開を控えております。


裁判記録には,これまでの記録を載せています。

2016年8月10日水曜日

2016.8.8第6回口頭弁論期日報告

2016.8.8
2016.8.8第6回口頭弁論期日報告

 子ども脱被ばく裁判 弁護団長 井 戸 謙 一


第1 第三次提訴について
1 2016年5月10日、第三次提訴を行いました。子ども人権裁判原告が3名、親子裁判原告が30名(子ども人権裁判の原告3名を含む)です。
2 本日、第三次提訴分についての第1回口頭弁論が開かれ、第一次提訴分・第二次提訴分の事件と併合されました。(今後は、3つの事件が一体として審理されることになります。)

第2 今回の期日について
1 原告側が準備した準備書面
(1) 原告側は、準備書面(14)(15)(16)を提出しました。
(2) 準備書面(14)は、被告国が前回提出した準備書面(2)の一部に対する反論で、国が依拠する低線量被曝に関するワーキンググループ報告書(WG報告書)及びICRP2007年勧告の内容を批判するものです。
準備書面(15)も、被告国準備書面(2)の一部に対する反論で、国には市民に対してスピーディやモニタリングデータの情報を提供する義務がないとの国の主張を批判し、このような市民の生命、健康にかかわる情報を提供するのは法律上の義務であることを主張するものです。
(3) 準備書面(16)は、被告国からなされた質問に対する回答です。被告国は、親子裁判の原告の中に、他の訴訟(生業訴訟、いわき市民訴訟等)でも原告になり、国に対して損害賠償を求めている人がいることから、重複訴訟ではないかと問い質してきました。これに対しては、他の訴訟で求めているのは、国が東京電力に対して規制権限を適正に行使せず、福島原発事故を招いたことに対する損害賠償であり、本件で求めているのは、福島原発事故発生後、国が被ばくから市民を防護する義務を果たさなかったことに対する損害賠償であるから、対象が異なり、重複訴訟には当たらないと主張しました。また、国は、被ばくの不安についての精神的苦痛は、東京電力から受け取った賠償金によって満足していると考えられるから、原告ごとに東電から受け取った賠償金の金額を明らかにするよう求めました。これに対しては、東京電力から受け取ったのは、東京電力が原発事故を起こしたことによる損害の賠償であり、本件で請求しているのは、事故後になされるべき防護対策がなされたなったことによる損害の賠償であって、対象が異なるから、東電から受け取った賠償金の金額を明らかにする必要はない、として、国の求めを拒否しています。

2 本日の裁判所
裁判所は、子ども裁判の進行について被告自治体らの意見を求めました。被告自治体らは、裁判所の判断に従うとの意見だったので、裁判所は、子ども裁判について分離判決をしないことを明言し、子ども裁判の被告自治体らに対し、原告らの主張の中身について(今の環境が子どもにとって健康上のリスクがあるか否かについて)反論をするように求めました。これによって、子ども裁判が門前払い却下されるおそれがなくなりました。

第3 今後の展開
1 子ども裁判の被告である自治体らから、実質的は反論が出てきます。ようやく、現在の福島の被ばく環境と健康上のリスクについて、本格的な議論が始まります。
また、親子裁判では、今後、原告側で、原告の陳述書に基づいて、国や福島県の違法行為によって各原告がどのような損害を被ったか(どのように無用な被ばくをさせてしまったか)について主張をしていくことになります。
2 県民健康調査を縮小する方向が打ち出されています。被ばくを軽視し、その被害を隠す企てが急速に進行している中で、この裁判の持つ意味は大きいと思われます。
子ども裁判について門前払い却下するという裁判所の方針を変えさせることができたのは、全国の方々から多数の署名をお寄せいただいたことの成果だと考えます。これからも、ご支援をよろしくお願いいたします。
以上 

 


2016年5月28日土曜日

子ども脱被ばく裁判の予定(平成28年後半)

子ども脱被ばく裁判の予定(口頭弁論期日)は以下のとおりです。


  第6回 口頭弁論期日 8月8日(月)15時

  第7回 口頭弁論期日 10月12日(水)15時

  第8回 口頭弁論期日 12月12日(月)15時


場所は,すべて福島地方裁判所203号法廷です。
福島地方裁判所:福島市花園町5-38

2016.5.26第5回口頭弁論期日報告


2016年5月27日
第5回口頭弁論期日報告

弁護団長  井 戸 謙 一

1 第三次提訴
  2016年5月10日、第三次提訴を行いました。子ども人権裁判には、新たに3名の子供たちが、親子裁判には新たに27名の親子が原告に名乗りをあげました。

2 進行協議期日(2016年5月26日午後2時)
  口頭弁論期日に先立ち、進行協議期日が開かれました。席上、裁判官は、第三次提訴があったので、これを第一次提訴・第二次提訴分と併合審理する予定であること、したがって、行政訴訟部分(「子ども人権裁判」のことです。)を国家賠償訴訟部分(「親子裁判」のことです。)から分離して判決をするか否かは、第三次訴訟を併合してから決めることを述べ、「本日の口頭弁論期日では、分離はしない」という方針を明らかにしました。その上で、裁判長は、次のように発言しました。
「行政訴訟部分の原告らの請求は、多岐にわたっており、問題となっている「訴訟要件」も同一ではない(被告市町村は、子ども人権裁判は、『訴状要件』が欠けているから門前払い却下すべきだと主張しています。)。裁判所が、行政訴訟部分を分離して判決した場合、結論がすべての請求について同一になるとは限らない(一部の請求は、訴訟要件を欠き、違法であるから却下しても、一部の請求については訴訟要件を備えており、適法であるという判断になることがあり得るということ)。その場合、原告は、却下された請求については、控訴するだろうから(適法な請求は、福島地裁で審理が続けられるので)、子ども人権裁判が、仙台高裁と福島地裁の双方で同時に審理されることになる。こうなると、原告も被告も負担が大きい。従前、被告市町村は、行政訴訟部分を分離して判決することを裁判所に求めており、裁判所もそのつもりであった。しかし、上記のような事態が生じ得るのだから、被告市町村には、行政訴訟部分の分離・判決を裁判所に求めるのか、再検討してほしい。」
裁判長は、要するに、「行政訴訟部分(子ども人権裁判)を分離・判決しても、すべての請求について訴訟要件がないとして却下するという判断はできないと考えている。そうなると、分離・判決をする意味がないので、被告市町村は、裁判所に対し、分離・判決を求める意見を撤回してほしい。」と、暗に求めたのだと理解できます。
これで、子ども人権裁判について、少なくともすべての請求が却下されるという心配は事実上なくなり、実体の審理(行政が、希望する子どもたちを今よりも安全な地域で教育する義務があるか)に入ることができることがほぼ確実になりました。たくさんの方々のご尽力により、全国から多数の署名と要請ハガキを寄せていただいたこと、原告の人たちが口頭弁論の都度、裁判官に対して直接訴え続けたことが実を結んだものと思います。なお、最終的な決定は、次回になされます。

3 口頭弁論期日(2016年5月26日午後3時)
口頭弁論において、原告側は、準備書面(11)(12)(13)を陳述しました。準備書面(11)は、子ども人権裁判の請求が訴訟要件を備えている旨を主張したものです。準備書面(12)は、東大の児玉龍彦教授に作成していただいた意見書に基づいて、スピーディやモニタリングデータ等の情報を隠ぺいした国の不作為を断罪したものです。児玉教授は、意見書で、特に文科省の無為無策を厳しく追及しておられます。準備書面(13)は、安定ヨウ素剤を服用させなかったことの違法主張の追加であり、1999年にウクライナの内分泌代謝研究所所長のトロンコ氏が発表した論文では、小児甲状腺がんになった子どもたちの甲状腺吸収線量は、100mSv以下が過半数であり、36%の子供たちは50mSv以下、15%の子供たちは10mSv以下であったことが分かっており、これを踏まえてWHOは、安定ヨウ素剤服用の基準を小児甲状腺等価線量10mSvに引き下げたのだから、100mSvのまま放置していた日本の基準は、高すぎて違法である、等と主張したものです。
他方、被告国からは、長期低線量被ばくの健康リスクについて、本格的な主張が出てきました。長期低線量被ばくによる健康被害は、発がん以外にはなく、発がんのリスク増加も100mSvを超えない限り、認められていないとし、ICRPの2007年勧告は正当であって、国は、これに従ったものであって何ら問題はないというのです。そして、国には、モニタリングデータを住民に提供する法的義務はない、20mSv通知は、指導助言にすぎず、これに従うか否かは、福島県の判断に委ねられていた、と断じました。
また、今回も2名の原告が、意見陳述をしました。その静かな怒りは、法廷中の人たちの胸に突き刺さったことと思います。

4 今後の予定
次回期日は、8月8日(月)午後3時からです。次々回期日は、10月12日(水)午後3時、次々々回期日は、12月12日午後3時とさだめられました。期日のペースが2か月に1回と早くなってきました。裁判所の姿勢が積極的になってきたように感じます。
いよいよ、本格的な議論が始まりました。引き続き、ご支援をお願いいたします。

以上

2016年2月29日月曜日

平成28年2月25日(第4回口頭弁論期日)での活動の様子

前半、裁判前の映像です
20160225 UPLAN【事前交流集会】子ども脱被ばく裁判第4回期日  https://www.youtube.com/watch?v=6SBxP6Oq_xw


後半、裁判所前から記者会見、意見交換会までの映像です。
https://www.youtube.com/watch?v=P_Axb8t-i7Q

2016.2.25第4回口頭弁論期日報告

2016.2.27

2016.2.25第4回口頭弁論期日報告

子ども脱被ばく裁判 弁護団長 井 戸 謙 一

第1 今回期日に至る経緯
  1 前回の第3回口頭弁論期日で、金沢裁判長が、親子裁判から子ども人権裁判を分離・終結して門前払い判決をする意思を明確にしました。私たち弁護団は、前回期日の場で分離・終結を阻止することに何とか成功し、今回期日まで、裁判所に分離・終結をさせない対策を検討する時間を確保しました。
 2 今回の期日までに弁護団がとった対策は、次の(1)(2)でした。 
 (1) 「危険とまでは言えない地域」を表した地図を更に詳細化する。
 (2) 現在の教育環境では子どもの健康リスクを否定できないことを理由に、現在の学校施設で教育活動を続けないことを求める請求を追加する。(いままでの請求は、「危険とまでは言えない地域」で教育を受ける権利があることの確認及び教育をすることを求める請求でしたが、「危険とまでは言えない地域」の特定が難しく、裁判所がその点を理由に門前払い判決をすると思われましたので、今までの請求の前提となる「現在の学校施設で教育活動を続けさせない」ことを独立の請求として立てたものです。この請求が認められた場合、ではどこで教育活動をするかは行政が自分の責任で考えろということになります。この請求では、「危険とまでは言えない地域」を原告側で定義づけ、これを特定の必要がありませんから、門前払い判決をする理由がなくなります。) 
 3 更に、弁護団は、原告や支援者たちとの意見交換で受けた示唆を踏まえて、「危険とまでは言えない地域」として、従前の2つの定義(「現在において追加実効線量(外部被ばく)が年0.3mSvを下回る地域」、「事故直後においてセシウム137の土壌汚染が37000ベクレルを下回る地域」)に加えて、3つ目の定義を立てることとしました。これは、原発で出た資材を再利用するための基準であるセシウム134、137合算で1キログラム当たり100ベクレル(クリアランス基準といいます)を参考に、「現在においてセシウム134、137合算で土壌1キログラム当たり100ベクレル(1平方メートルあたり6500ベクレル)を下回る地域」というものです。ただし、最も新しい文科省の航空機モニタリングにおける表示下限が1平方メートルあたり1万ベクレルですので、せめて、このモニタリングによって、「セシウム134、137合算で1平方メートルあたり1万ベクレルを上回らない地域」としました。これについても、専門的技能を持った方に甚大なご協力をいただき、詳細な地図でその地域を特定しました。 
 4 これらの請求を新たにたてたところ、被告らからは、これらの新請求も、不適法だから門前払い却下すべきである旨の主張が出されていました。

第2 今回の期日
 1 今回、金沢裁判長は、この期日において子ども人権裁判を分離・終結しないことを言明しました。そして、原告側に対し、新請求について被告らから出ている「門前払い却下」すべきであるとの主張に対して反論するように求めました。 裁判所は、前回の期日では、当事者の主張を聞くこともなく、裁判所の考えで門前払い却下する意向を示していましたので、今回の対応は、前回とは全く違っていたと評価することができます。被告らの主張に対して原告側が適切に反論すれば、裁判所は、門前払い却下ができなくなる可能性が強いように思われます。
 2 今回も原告お二人が意見陳述をされました。お一人は、関東に自主避難されたお母さんで、自主避難が遅れ、子どもに無用な被ばくをさせたことの無念さと行政に対する怒りを凛として話されました。お一人は、現在も福島で子育てを続けているお母さんで、今の福島で子育てをすることの悩み、苦しみを訴え、条件さえ許せば、普通の環境で子育てをしたいという思いを述べられました。原告代理人や傍聴席は勿論のこと、裁判官や被告側代理人の胸にも強く響いたものと思います。
 3 前回期日以降も、全国で多くの方が署名運動に取り組んでいただきました。寄せられた署名は、6755筆で、累計で2万4214筆になりました。これを裁判所に提出しました。

 第3 次回期日
 次回期日までに、原告側は、被告の「新請求についても門前払い却下すべき」との主張に対する反論をします。被告側は、特に国が、親子裁判について、次回から実質的な反論をする旨言明しました。
 次回には、子ども人権裁判については門前払い却下されるか否かが明確になります。また、親子裁判については、論争がいよいよ本格化します。
 署名運動は少なくとも子ども人権裁判を門前払い却下されないことが明らかになるまで続けます。この間の署名運動によって、全国で多くの人たちがこの裁判に注目しているということを裁判所に示せています。ありがとうございました。引き続き、ご協力をお願いいたします。
以上

2016年2月27日土曜日

2016.2.27

2016.2.25第4回口頭弁論期日報告

子ども脱被ばく裁判 弁護団長 井 戸 謙 一

第1 今回期日に至る経緯
  1 前回の第3回口頭弁論期日で、金沢裁判長が、親子裁判から子ども人権裁判を分離・終結して門前払い判決をする意思を明確にしました。私たち弁護団は、前回期日の場で分離・終結を阻止することに何とか成功し、今回期日まで、裁判所に分離・終結をさせない対策を検討する時間を確保しました。
 2 今回の期日までに弁護団がとった対策は、次の(1)(2)でした。 
 (1) 「危険とまでは言えない地域」を表した地図を更に詳細化する。
 (2) 現在の教育環境では子どもの健康リスクを否定できないことを理由に、現在の学校施設で教育活動を続けないことを求める請求を追加する。(いままでの請求は、「危険とまでは言えない地域」で教育を受ける権利があることの確認及び教育をすることを求める請求でしたが、「危険とまでは言えない地域」の特定が難しく、裁判所がその点を理由に門前払い判決をすると思われましたので、今までの請求の前提となる「現在の学校施設で教育活動を続けさせない」ことを独立の請求として立てたものです。この請求が認められた場合、ではどこで教育活動をするかは行政が自分の責任で考えろということになります。この請求では、「危険とまでは言えない地域」を原告側で定義づけ、これを特定の必要がありませんから、門前払い判決をする理由がなくなります。) 
 3 更に、弁護団は、原告や支援者たちとの意見交換で受けた示唆を踏まえて、「危険とまでは言えない地域」として、従前の2つの定義(「現在において追加実効線量(外部被ばく)が年0.3mSvを下回る地域」、「事故直後においてセシウム137の土壌汚染が37000ベクレルを下回る地域」)に加えて、3つ目の定義を立てることとしました。これは、原発で出た資材を再利用するための基準であるセシウム134、137合算で1キログラム当たり100ベクレル(クリアランス基準といいます)を参考に、「現在においてセシウム134、137合算で土壌1キログラム当たり100ベクレル(1平方メートルあたり6500ベクレル)を下回る地域」というものです。ただし、最も新しい文科省の航空機モニタリングにおける表示下限が1平方メートルあたり1万ベクレルですので、せめて、このモニタリングによって、「セシウム134、137合算で1平方メートルあたり1万ベクレルを上回らない地域」としました。これについても、専門的技能を持った方に甚大なご協力をいただき、詳細な地図でその地域を特定しました。 
 4 これらの請求を新たにたてたところ、被告らからは、これらの新請求も、不適法だから門前払い却下すべきである旨の主張が出されていました。

第2 今回の期日
 1 今回、金沢裁判長は、この期日において子ども人権裁判を分離・終結しないことを言明しました。そして、原告側に対し、新請求について被告らから出ている「門前払い却下」すべきであるとの主張に対して反論するように求めました。 裁判所は、前回の期日では、当事者の主張を聞くこともなく、裁判所の考えで門前払い却下する意向を示していましたので、今回の対応は、前回とは全く違っていたと評価することができます。被告らの主張に対して原告側が適切に反論すれば、裁判所は、門前払い却下ができなくなる可能性が強いように思われます。
 2 今回も原告お二人が意見陳述をされました。お一人は、関東に自主避難されたお母さんで、自主避難が遅れ、子どもに無用な被ばくをさせたことの無念さと行政に対する怒りを凛として話されました。お一人は、現在も福島で子育てを続けているお母さんで、今の福島で子育てをすることの悩み、苦しみを訴え、条件さえ許せば、普通の環境で子育てをしたいという思いを述べられました。原告代理人や傍聴席は勿論のこと、裁判官や被告側代理人の胸にも強く響いたものと思います。
 3 前回期日以降も、全国で多くの方が署名運動に取り組んでいただきました。寄せられた署名は、6755筆で、累計で2万4214筆になりました。これを裁判所に提出しました。

 第3 次回期日
 次回期日までに、原告側は、被告の「新請求についても門前払い却下すべき」との主張に対する反論をします。被告側は、特に国が、親子裁判について、次回から実質的な反論をする旨言明しました。
 次回には、子ども人権裁判については門前払い却下されるか否かが明確になります。また、親子裁判については、論争がいよいよ本格化します。
 署名運動は少なくとも子ども人権裁判を門前払い却下されないことが明らかになるまで続けます。この間の署名運動によって、全国で多くの人たちがこの裁判に注目しているということを裁判所に示せています。ありがとうございました。引き続き、ご協力をお願いいたします。
以上