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2024年12月4日水曜日

最高裁「棄却」決定に対する抗議声明

2024年12月4日

 

最高裁「棄却」決定に対する抗議声明

 

子ども脱被ばく裁判原告団

子ども脱被ばく裁判弁護団

子ども脱被ばく裁判の会 

最高裁判所は、2024年11月29日、令和6年()第542号上告申立事件、同年()第699号上告受理申立事件(通称「子ども脱被ばく裁判」)において、上告棄却、上告不受理の決定をした(以下「本件決定」という。)。 

子ども脱被ばく裁判は、東京電力福島第一原発事故(2011年3月11日)当時、福島県内に居住していた親子が原告となって、被告国及び被告福島県に対し、国や県が子どもたちを被ばくから防護するためのまともな対策を取らなかったこと、すなわちSPEEDI等の被ばくに関する情報を市民に隠蔽したこと、子どもたちに安定ヨウ素剤を服用させなかったこと、福島県だけ一般公衆の被ばく限度として定められている年1mSvの20倍である年20mSvを基準として学校を再開させたこと、子どもたちを集団疎開させなかったこと、県が山下俊一氏を委嘱して根拠のない安全宣伝を繰り返したこと等の責任を問うた訴訟である。被告らのこれらの違法行為によって、親や子どもたちは、被ばくをどの程度まで受忍(我慢)するかについての自己決定権を侵害され、子どもたちは、本来なら避けることができた無用な被ばくを強いられ、生涯に及ぶ健康不安を余儀なくされた。守ってもらえると信じていた国や福島県に守ってもらえず、やり場のない憤りや苦しみにあえいだ原告親子は、責任の所在を明らかにし、生命や人権が擁護されない状況を改善するため、やむをえず本件訴訟を提起したのであった。

原告らの請求を退けた2023年12月18日仙台高裁判決に対し、原告らは、上告及び上告受理を申し立て、原判決には、多くの点で理由不備、理由齟齬があり、憲法第13条(生命、自由、幸福追求の権利)、第14条(法の下の平等)、第15条(公務員の義務)に違反すること(上告理由)、あるいは法令の解釈に関する重要な事項を含むこと(上告受理理由)等を詳細に主張していた。しかし、最高裁の本件決定は、原告らの主張が上告理由に当らず、上告を受理すべきものとは認められないと述べるだけで、内容には全く踏み込まずに原告らの申立てを退けるものであった。少数意見すらつかず、裁判官全員一致の判断であった。

福島第一原発事故当時、市民の多くは被ばく問題についてほとんど知識がなかった。ベクレルもシーベルトも分からず、被ばくの危険の理解も乏しく、自分たちの生活環境がどのように汚染されているかの情報もなかった。子どもたちを守るためには、被ばくについての正確な情報、被ばくの危険性についての偏らない知識が不可欠だった。しかし、必要な情報は隠蔽され、偏った安全宣伝が繰り返された。これによって、我が子に無用な被ばくをさせてしまったと悔やんでいる多くの親たちがいる。国や福島県は、福島第一原発事故による健康影響はないと声高に喧伝しているが、甲状腺がんに罹患した若者たちを含め、体調不良に悩む人々は少なくない。このことに対する国や福島県の責任を明らかにしなければ、次の原発事故でも同じ悲劇が繰り返される。それだけは、何として防ぎたい。この切なる願いで提起された訴訟であった。

原告らだけでなく、同じ思いを抱いている支援者は、国内はもとより、世界の各地に拡がっており、公正な判決を求める署名は一審以来約10万筆に及んでいる。最高裁に対しても、口頭弁論期日の指定を求めて直筆で書かれた1000通を超える葉書が寄せられた。本件決定は、これらすべての思いを引き裂き、踏みにじるものであった。これにより、次の原発事故においても、次世代の子どもや、私たちの「命」、「健康」を軽視する不当な行政裁量がまかりとおる危険が放置、容認されることとなった。

私たちは、国及び福島県によって行われた違法な被ばく防護対策を許した最高裁に強く抗議するとともに、行政が住民の被ばく防護対策に真摯に向き合うよう今後も力を尽くすことを宣言する。

子ども達は自らを護れない。子ども達を護るのは大人達の責任であり、義務である。私たちは呆れ果てても諦めない。

以上


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