第17回口頭弁論期日報告 (2018/12/11)
1 2018年12月11日14時30分から、子ども脱被ばく裁判第17回口頭弁論が開かれました。原告側から準備書面(62)、(63)、(64)が提出されました。原告準備書面(62)は、既に提出されている国の第10準備書面に対する反論です。国は同準備書面において、「原告らの主張する『年1mSvの被ばくであっても、無用な被ばくによる健康被害を心配しないで生活する権利』なるものは、国賠法の救済が得られる具体的な権利ないし法的利益とはいえない」、「一般的、抽象的な健康リスクに対する不安感のみをもって国賠法の救済が得られる権利ないし法的利益があると認めることができない」、損害と請求原因との因果関係が明らかでない、そして「消滅時効の援用」についていろいろと述べています。これに対して、原告準備書面(62)では、抽象的な危惧感や不安感を権利ないし法的利益として主張しているのではなく、被ばくを避けて、健康に生存・生活するという個人の基本的な権利(健康13条、25条)が住民の健康と福祉を守る責務を有している被告らの行為によって意図的に侵害されたことで現実的に発生している将来への健康不安という精神的侵害の賠償を求めているものであること、消滅時効については時効の起算点が,「被害者において,加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度にこれらを知った時」であり最判も「被害者が損害を知った時とは,被害者が損害の発生を現実に認識した時をいう」としていることを明確に説明しています。
また、原告準備書面(63)では、河野益近氏による調査を紹介し、福島県内の土壌中の放射性セシウムが不溶性微粒子の形態で存在し、県内子ども原告らが今後も福島県内に住み続けた場合に、同微粒子の摂取による健康被害を受けるリスクがあることを立証しています。
そして、原告準備書面(64)では、SPEEDIシステムの運用について、関係道府県と文科省、システム運営を受託する(財)原子力安全技術センター関係者らが定期的に連絡会議を持っていたこと及びそこで議論されていた内容を説明し、あわせてSPEEDIシステムは、原子力災害応急対策の基幹システムとして法令上も位置付けられていたこと、また、端末を設置していた被告福島県は災対法によってその情報を住民の防護対策のために利用しなければならず、被告福島県のSPEEDI情報の取り扱い(メール廃棄を含む)は、法令上の義務違反にあたることを説明しています。
2 基礎自治体(福島市、会津若松市、田村市、郡山市、伊達市)から準備書面が提出されました。原告準備書面(61)で「各市町村内の総合病院の患者数の推移を調査し」その結果を明らかにすることを要望していますが、いずれも、その要望に応じる必要はないという内容です。
3 今回、国から第11準備書面が提出されました。原告準備書面(55)において、「放射線管理区域規制の趣旨について」「20mSv通知の趣旨について」「低線量被ばく、内部被ばくの危険性について」の3項目ついて、国に対して求釈明をしていますが、これに対し国が第11準備書面において回答して来ました。
4 また、今回の期日において山下俊一氏の講演内容がおさめられているDVDが、裁判官、原告の皆さん、原告代理人、支援者、被告代理人の前で再生されました。1時間を超える内容でしたが、後半の福島の住民の皆さんからの質問に対して「全く影響はありません。」という断言を連発していました。
5 山下俊一氏のDVDの再生、原告代理人の提出書面の要旨の説明に引き続き、原告であるお母さんからの意見陳述がありました。裁判官の皆さんにこのお母さんの気持ちが伝わっていると確信しました。
以上です。
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