子ども脱被ばく裁判2018年10月16日第16回口頭弁論期日報告
弁護団長 井 戸 謙 一
1 原告側は、準備書面58~61の4通の準備書面を陳述し、調査嘱託の申立てをしました。
(1) 準備書面58
内部被ばくの健康リスクを実効線量で評価してはいけないこと、特にセシウムの不溶性微粒子による内部被ばくは、危険性が大きいことを主張したもの
(2) 準備書面59
被告福島県に対し、福島県県民健康調査甲状腺検査における「経過観察問題」、すなわち、経過観察となった後に甲状腺がんを発症した子どもの数を調査の上、明らかにすることを求めたもの
(3) 準備書面60
山下俊一氏が福島原発事故直後に福島県内各所でした講演の内容が、科学的に荒唐無稽であることを主張したもの
(4) 準備書面61
南相馬市立総合病院の「患者数の推移」として南相馬市が公表したデータによって、福島原発事故後、同病院の患者数が増加していることを指摘し、被告基礎自治体に対し、各区域内の総合病院の患者数の推移を証拠提出することを求めたもの(なお、南相馬市立総合病院の上記データについては、ネット等で、「患者数ではない」との意見が公表されていますので、今後、その数字の持つ正確な意味を明らかにしていく必要があります。)
(5) 調査嘱託申立て
福島県立医大及び同大学鈴木眞一教授をリーダーとする研究チームに対し、経過観察とされた子どもの中から甲状腺がんを発症した子どもの数の報告を求めたものです。
2 被告国は、第10準備書面を提出しました。その内容は、①子どもが無用な被ばくをしたことによる精神的苦痛は、法的保護に値しない、②原告らの権利は、既に時効消滅している、というものです。
3 被告福島県は、第16準備書面、第17準備書面を提出しました。第16準備書面は、日本の法律による年1ミリシーベルト規制や放射線管理区域規制の趣旨等を述べたもの、第17準備書面は、被告福島県は、県民健康調査甲状腺検査の経過観察中の甲状腺がん発症数を把握しておらず、調査する義務もないと主張するものです。
4 裁判所は、上記1(5)の調査嘱託については、被告国の意見を聞いて採否を決定することになりました。また、原告側は、上記1(3)の準備書面60に関連して、山下氏の講演映像のDVDを証拠として提出しており、これを法廷で再生することを希望していましたが、これは、次回に行うこととなりました。
5 今回は、新たに3043筆の署名を裁判所に提出することができました。署名活動へのご協力、ありがとうございました。
6 次回口頭弁論期日は、12月11日午後2時30分、その次の期日は、来年2月20日午後2時30分です。引き続きのご支援と多数の傍聴をお願いいたします。