2017年2月18日土曜日

2017.2.15第9回口頭弁論期日報告

2017.2.17
2017年2月15日第9回口頭弁論期日の報告

弁護団長  井 戸 謙 一


第1 今回の期日で陳述された準備書面は次のとおりです。
 1 原告側
  (1) 準備書面(24)
 親子裁判における被告福島県の主張に対する反論を内容とするもの
  (2) 準備書面(25)
 親子裁判において、被告国が個々の子どもの被ばく線量を明らかにするよう求めてきたのに対し、その必要がないと拒絶したもの。被ばくは、どんなに少量であってもそれに応じた健康リスクがある(LNTモデル)のですから、原告側としては、子どもたちが被告国及び被告福島県の義務違反行為によって無用な被ばくをしたことを主張、立証すれば足り、個々の子ども毎に、実際に受けた線量、無用な被ばくによる線量を明らかにする必要はありません。また、現実問題として、原告側が正確な線量を主張することは不可能であり(それ自体、国や福島県が被災者の被ばく量測定をサボタージュしたことが原因です)、これを求めるのは不可能を強いるものです。
  (3) 準備書面(26)
 年1mSvの被ばくでも健康リスクがあることを述べたもの。土壌汚染の環境基準(ベンゼンであれば、それが含まれた地下水1リットルについて0.01ミリグラム)は、その地下水を生涯70年にわたって毎日2リットルを飲用した場合に健康被害が10万分の1となるレベルで設定されています。これに対し、年1mSvの被ばくを生涯70年間続けると、ICRPの考え方でも、10万人中350人が過剰にガン死することになります。環境基準に比べて年1mSv基準ははるかに甘く、年1mSv以下であっても、無用な被ばくをさせられたことに基づく精神的苦痛は法的保護に値することを主張したものです。
  (4) 準備書面(27)
 被告国と被告福島県の義務違反行為によって個々の子どもが無用な被ばくをさせられたことを具体的に述べたもの。同時に、原告らの陳述書9通を提出しました。

 2 被告側
  (1) 被告国 準備書面(5)
 情報隠蔽問題について、国の主張を述べたもの。スピーディ情報を公表していたらかえって被災者を混乱させていた等として、公表しなかったことを正当化しています。
(2) 被告福島市準備書面(3)、同会津若松市準備書面(3)、同郡山市・田村市準備書面(3)、同川俣町準備書面(4)
 いずれも、前回の原告側の求釈明に対する回答を内容とするものです。福島市における給食は、平成23年11月~平成24年4月までは500bq/kgを基準としていたこと、郡山市では、平成23年4月5~7日の測定で、文科省基準の3.8μSv/時を超えていた小中学校が4校あったが、その後、基準以下になったから他の小中学校と同様に始業したこと等が説明されています。

 3 法廷でのやり取り
 原告側は、被告国に対し、原子力緊急事態宣言の具体的内容についての説明を求めていますが、国は答えません。今回も求めたのに対し、国は必要がないとの態度でしたが、最終的には、検討することになりました。

第2 裁判所
 被告国が、東京電力に対する調査嘱託を申し立てていました(各原告に支払った損害賠償金額について)が、その採否を留保する旨を明らかにしました。

第3 原告の意見陳述
 今回は、原告の中手聖一さんが意見陳述をしました。行政に対する淡い期待が裏切られたことに対する怒り、子どもに対する大人の責任を果たす決意などが述べられ、聞く者の胸を打ちました。

第4 今後の予定、その他
 1 子ども人権裁判
 被告基礎自治体の回答に基づいて原告側の主張の補充をする予定です。
 2 親子裁判
 引き続き、原告側で原告の陳述書の追加提出と、因果関係(被告国や被告福島県の無作為によって、子どもたちがどのように無用な被ばくをさせられたか)についての追加主張をします。また、被告国の準備書面(5)に対する反論、低線量被ばくの危険性についての追加主張も行う予定です。
 3 署名について
 全国からたくさんの署名をお送りいただいています。累計で4万筆を突破しました。ありがとうございました。引き続き、ご協力をよろしくお願いいたします。
以上


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