2017.5.24 子ども脱被ばく裁判第10回口頭弁論期日の報告
原告ら弁護団長 井 戸 謙 一
第1 主張、立証について
今回の期日で陳述された準備書面は次のとおりです。また、原告の陳述書8通を提出しました。
1 原告側
(1) 準備書面(28)
準備書面(26)の一部を訂正したもの(数値の誤り)
(2) 準備書面(29)
ICRP2007年勧告の趣旨を正しく理解すれば、緊急時被ばく状況における参考レベル年20~100ミリシーベルト、現存被ばく状況における参考レベル年1~20ミリシーベルトを根拠に年20ミリシーベルトを学校校庭での被ばく線量の暫定的な目安とした国の措置が違法であることを述べたもの
(3) 準備書面(30)
SPEEDIのデータの公表は国の義務であり、これを公表しなかったことを正当化しようとする国の主張が不当であることを述べたもの
(4) 準備書面(31)
福島県内では、今なお放射線管理区域の基準を超える地域が広範に広がっていること、福島では放射性降下物が今なお多量に検出されること、土壌汚染レベルが高いと、土壌中の放射性微粒子が再浮遊し、呼吸によりこれを取り込んで内部被ばくする危険があること、放射性微粒子の存在の一形態であるセシウムボールはわずか球径2ミクロンの大きさであるが、そこに数十億個のセシウム原子があるとされていること等を述べたもの
(5) 準備書面(32)
安全配慮義務の主張を補充したもの、すなわち、福島原発事故後、放射性物質は環境基本法のもとで規制されることになったが、未だに、放射性物質についての「環境基準」も「規制基準」も定められていないこと、学校保健安全法に基づく「学校環境衛生基準」にも放射性物質についての定めがないこと、これらは、法令の欠缺であり、条理によって補うべきこと、「環境基準」と「学校環境衛生基準」は同等に定められるべきこと、放射性物質の規制基準は「年1ミリシーベルト」と定めるべきであり、環境基準は「年50マイクロシーベルト」と定めるべきこと、被告基礎自治体らには学校環境衛生基準を順守する義務があること等を述べたもの
(6) 準備書面(33)
福島県民健康調査で公表されていた小児甲状腺がんの患者数は一部であり、一旦「経過観察」とされた後に発見された患者は、上記公表値に含まれていないことが判明したこと、福島県は、上記の隠された患者数を未だに公表していないことを指摘し、福島県に対し、その数を明らかにするよう求めたもの
(7) 準備書面(34)
文科省の20ミリシーベルト通知につき、強制力がないとの国の主張に対する反論として、この通知が事実上の強制力を持つことを明らかにするとともに、その違法性について補充主張したもの
(8) 準備書面(35)
一部の原告につき、主張の一部を撤回したもの
2 被告側
(1) 被告国 第6準備書面
低線量被ばくの危険性に関し、①LNTモデルが科学的に立証されていないこと、②原告らが提出した長期低線量被ばくに関して各国で報告されている疫学調査結果の結果について、その結論が誤りであること、③福島県民健康調査の結果は、被ばくとは関係がないこと等を述べるもの
(2) 被告会津若松市第4準備書面、被告伊達市第6準備書面、被告川俣市準備書面(5)、被告福島市第4準備書面、被告いわき市準備書面(9)、被告田村市・郡山市第7準備書面
これらの準備書面では、「安全配慮義務」違反を理由として損害賠償請求をすることはできても、損害が発生する前に「履行請求」(安全に対する配慮を求めること)をすることはできないと主張しています。
3 法廷でのやり取り
国は、原告側が求めていた原子力緊急事態宣言の具体的内容についての説明を拒否しました。引き続き求めていきます。
第2 原告の意見陳述
今回は、福島市に住むお父さんの意見陳述書を、その方が出頭できなかったので、原告団代表の今野さんが代読しました。こどもを守りたいという気迫にあふれた文章でした。
第3 今後の予定、その他
1 子ども人権裁判
被告基礎自治体らは、原告準備書面(32)に対する反論をします。原告側は、安全配慮義務の履行請求ができることについて主張を補充します。
2 親子裁判
引き続き、原告側で原告の陳述書の追加提出と、因果関係(被告国や被告福島県の無作為によって、子どもたちがどのように無用な被ばくをさせられたか)についての追加主張をします。また、被告国の準備書面(6)に対する反論を行います。
3 署名について
全国からたくさんの署名をお送りいただいています。累計で4万5000筆を突破しました。ありがとうございました。引き続き、ご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。
以上
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