第11回口頭弁論期日(2017年8月8日)の報告
弁護団長 井 戸 謙 一
1 今回は、子どもたちの夏休み中であった上、福島に帰省しておられる避難者の方々もおられたため、17名(大人10名、子ども7名)もの原告親子が原告席に並びました。法廷に強いインパクトを与えたと思います。子どもたちは、書記官室に署名を届ける役割も果たしてくれました。
2 原告側は、4通の準備書面(36~39)を提出しました。その概要は、次のとおりです。
(1) 準備書面36
スピーディの情報隠ぺい問題についての補充主張を内容とするもの、とりわけ、スピーディ情報が伝達されなかった原因の一つとしてオフサイトセンターが機能しなかったことがあるが、機能しなかった理由は、エアフィルターの設置を怠った国の杜撰な対応にあること等
(2) 準備書面37
ICRPがLNTモデル(直線・しきい値なしモデル、低線量の被ばくであっても、その線量に応じた健康被害のリスクがあるという考え方)を採用しているのは、可能な限りの科学的検討をした上、その考え方が科学的に最も妥当であると判断したからであり、国がこれを軽視するのは誤りであること等
(3) 準備書面38
① 科学的に最も妥当だと国に原子力緊急事態宣言の具体的内容の説明を求める必要があること
②本件訴訟は、裁判所に対して、低線量被ばくの健康リスク問題についての科学的判断を求めているのではなく、低線量被ばくの健康リスクについての様々な研究結果とそれを踏まえて構築されてきた日本の法的規制(一般公衆の被ばく限度を年1ミリシーベルトとしていること、放射線管理区域の規制等)を踏まえて、その規制をはるかに超える被ばく環境で子どもたちに対する教育活動を実施することが許容されるのかという法的判断を求めているものであること
③ 公立小中学校を設置、運営している地方自治体には、義務教育を実施することによって子どもたちの健康を害することのないように配慮する義務があり、子どもたちには、地方自治体に対し、児童生徒の安全を護るために必要な措置をとることを求める権利があること
(4) 準備書面39
近年世界で公表されている低線量被ばくについての疫学調査結果が信頼に値するものであり、国の批判は的外れであること等
3 被告国は、原子力緊急事態宣言の内容について明らかにすることを拒否しましたが、裁判所は、これを明らかにするよう国に強く求めました。また、福島県は、原告側が、県民健康調査で喧嘩観察とされた後に甲状腺ガンが発見された子供の数を明らかにするように求めたのに対し、「その数を把握していない」として、これを拒否しました。我々は、この問題は、更に追求する所存です。
4 裁判所は、子ども人権裁判(行政訴訟)について、ほぼ議論が煮詰まったとして、次回には争点項目案を示すと述べました。親子裁判(国賠訴訟)については、あと2~3回、主張のやり取りが必要だと思われます。
5 議論は、中盤から終盤に差し掛かりつつあります。この裁判は、国や自治体の低線量被ばく対策の是非を正面から問う裁判です。引き続き、ご支援をお願いいたします。
以上
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