第15回口頭弁論 期日報告(2018/7/9)
1.
2018年7月9日、14:30から、子ども脱被ばく裁判第15回口頭弁論が開かれました。原告側からは準備書面(54)、(55)及び(56)を提出し、陳述しました。準備書面(54)は、被告国が連名意見書等を証拠として提出してLNTモデルは科学的に実証されていないなどと主張していることに対し、崎山意見書等を踏まえて詳細に反論するものです。準備書面(55)は、前回期日に被告国が行った口頭陳述を踏まえて被告国の主張に対しコメントし、低線量被ばくによる健康被害についての補充主張をするとともに、低線量被ばくの健康リスクについて議論を嚙みあわせるために、被告国と被告県に対し、詳細な釈明を求めています。準備書面(56)は、被告国と被告県の情報隠ぺい問題に関する反論に対する再反論をするとともに、被告国と被告県に対し資料の提出を求めるものです(各書面の詳細については弁護団ホームページにアップする書面をご参照ください)。
2.
被告側の学校を設置している基礎自治体(いわき市、伊達市、田村市、郡山市、福島市、会津若松市)から、原告が主張立証した不溶性放射性微粒子による内部被ばくの危険性の問題についての準備書面が提出されました。しかし、いずれも単に「不知」などとするものでした。井戸弁護団長は、学校を設置する基礎自治体としてそのような不誠実な態度で良いのかと問題提起し、より詳細な認否反論を求めました。
3.
被告福島県は、経過観察問題について、原告の釈明に答える予定はない、認否反論も不要であるとする書面を提出しました。柳原弁護士から、あらためて被告福島県に対して、小児甲状腺がんの症例数を把握し公表する義務があると考えているのかどうか問いただしましたが、明確な回答は得られませんでした。
4.
被告国は、求釈明申立書を提出し、原告の国家賠償請求は、「福島第一原子力発電所事故による、原子力損害の賠償に関する法律」に定める「特定損害」なのか否か、という釈明を行いました。この法律は、福島第一原発事故により東京電力に賠償を求める場合の時効期間を延長した法律です。本件で原告らが主張している、情報の隠蔽、子どもたちにヨウ素剤を服用させなかったこと、集団避難をさせなかったこと等は、いずれも国と県の不作為を問題にするもので、「特定損害」とはいえませんので、弁護団はそのように回答しました。国はこれを踏まえて次回以降、消滅時効の主張を行うものと予想されます。自ら責任を放棄して不作為をはたらいておきながらそのような主張が許されるものでしょうか。
5.
原告代理人の準備書面の説明に続いて、若い母親の原告が、意見陳述を行いました。「井戸弁護士の『怖がっていい、泣いていい、怒っていい』ということばを目にすると涙が出てくる、7年経った今もそうできる状況ではないから」「経済よりも何よりも、一人一人の命、健康を大事にしてほしい」涙ながらの訴えが裁判官の心に響いていることを願ってやみません。
6.
次回期日は10月16日、次々回は、12月11日、その次の期日は2019年2月20日(いずれも口頭弁論14:30開始)となります。今後の国側の反論とこれに対する原告の再反論で、原告被告間の主張のやりとりが一通り済んだかたちとなり、訴訟もいよいよ山場を迎えることとなると思われます。今後も多くの皆様のご支援をお願いいたします。
(文責 古川)
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