2020.2.14
第25回口頭弁論期日報告
弁護団長 井 戸 謙 一
2020年2月14日、第25回口頭弁論期日では、注目の鈴木眞一氏証人尋問が行われました。原告側60分、被告側60分の持ち時間制で行われ、限られた時間で有効な回答を引き出すことが求められました。
私たちは、次の4つの目標を立てました。①鈴木氏が甲状腺摘出術をした約180例のケースは、いずれも手術が必要だったケースであり、過剰診断、過剰治療ではないこと、したがって、今後、福島県民健康調査を縮小すべきではないという鈴木氏の意見をはっきりと述べてもらうこと、②福島県民健康調査で多数の甲状腺がん患者が見つかったのはスクリーニング効果であり、福島県で小児甲状腺がんが多発しているものではないという鈴木氏の主張が不合理であることを裁判所に認識させること、③経過観察に回した子供たちの予後を把握せず、福島の子ども達から発生した甲状腺がんの総数を明らかにしない点に、福島県民健康調査の闇があることを明らかにすること、④被ばくと甲状腺がんの因果関係を否定する鈴木氏の判断に合理性がないことを明らかにすること、以上です。
鈴木氏は、①について、自分が執刀したすべてのケースにおいて、手術が必要だったこと、福島県民健康調査は今の「サイズ」で継続すべきことを明言しました。②については、「福島で多発していないとすれば、摘出術が必要な子供が全国で1万2000人以上存在する計算になるがその子供たちを救わなくてよいのか」という質問に対し、回答を言い淀んでいました。鈴木氏が、本音では、手術を要する子供が全国にそんなにいるとは思っていない、逆に言えば、福島で多発していると思っていることを裁判所に感じ取っていただけたのではないかと思います。③では、鈴木氏がいわき市や会津若松市の病院でも甲状腺の摘出術をしていること、その症例は福島県民健康調査の件数に入っていないこと等が明らかになりました。福島県民健康調査検討委員会は、甲状腺がんの悪性若しくは悪性疑いの数を237人と報告していますが、それ以外に甲状腺がんにり患した子どもがどれだけの人数隠されているのか、闇がいよいよ深くなったと思います。④については、鈴木氏はそもそも複数の考え方が示されている問題について、そのうちの一つの考え方に固執しているにすぎないこと、そもそも悪性若しくは悪性疑いの総数が明らかにされていないのですから、被ばくとの因果関係について適切な判断ができるはずがないこと、それらのことを浮き彫りにして終わりました。
60分では時間が全く足らなかったというのが率直な感想です。しかし、制約がある中での一定の成果も獲得できたと思います。次回の山下俊一氏の尋問は90分間です。今回の経験を踏まえて、次回の戦略を立てたいと思います。
引き続き、ご支援いただきますよう、よろしくお願いいたします。
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