私たちは,福島で子育てをする方々が,国や福島市などに対して「こどもたちに被ばくの心配のない環境で教育を受ける権利が保障されている事の確認」(子ども人権裁判)と,「原発事故後,子どもたちに被ばくを避ける措置を怠り,無用な被ばくをさせた責任」(親子裁判)を追求する裁判の弁護団です。
2021年11月15日月曜日
子ども脱被ばく裁判の予定(次回)
控訴理由書、控訴理由書の補正書、控訴審準備書面⑴⑵
・控訴理由書(1p〜74p)
・控訴理由書(75p〜151P)
・控訴理由書の補正書210609
・控訴審準備書面⑴
・控訴審準備書面⑵
裁判記録には,これまでの記録を載せています。
証拠説明書や証拠についてはこちらから⇒裁判資料(証拠)
2021年3月16日火曜日
控訴状(2021年3月15日)とその報告
2021年3月15日に福島地裁に提出した控訴状。
以下は、控訴状を提出した弁護団の報告です。
***************
3月15日の控訴の報告
子ども脱被ばく裁判は3月15日、福島地裁に控訴状を提出し、控訴しました。以下、当日の提出を担当した弁護団の柳原からの報告です。
3月前半は「瞬く間」に過ぎてしまった――この日、控訴手続に参加した原告、代理人、支援者全員の率直な感想でした。判決言渡しがあった3月1日から控訴期限の15日まで無我夢中だったからです。
8日の弁護団から原告団に対する一審判決の説明会(オンライン)で、参加した原告の方々は全員控訴を表明し、11日の「控訴の声明」の通り、控訴が正式に決定しました。とはいえ、この日の参加した原告はわずかであり、他方、控訴は各原告自身が決定する事柄であるので、いったい、どれくらいの原告の方々が控訴するのか未知数でした。そのため、この8日から15日の提出まで、各原告への控訴の打診を行い、文字通り無我夢中の日々でした。2014年8月提訴以来6年半の年月が流れ、「原発事故は終わった。東京オリンピックを復興のシンボルに」といったまことの風評被害が吹き荒れ、それに追い討ちをかける1日の原告全面敗訴の過酷判決という逆境の中で、控訴は多くの原告の人たちにとって大変な試練だったはずです。しかし、この逆境にもかかわらず、15日には、行政訴訟6名、国賠訴訟125名の原告の方々が控訴しました。この人たちの存在は弁護団、支援団を鼓舞し、逆流に真正面から立ち向かおうと決意した原告の人たちに負けないように、私たちに第2ラウンドの戦いに立ち向かう決意を引き出してくれました。
3月15日から50日後(5月4日)が控訴審における私たちの所信表明ともいうべき控訴理由書の提出期限です。次は、一審判決のまちがい、おかしな点をみんなで検討する番です。裸の王様を笑うのが子どもです。その子どもが大笑いできるくらい「一審判決のまちがい、おかしな点」を解き明かして、大人も子どもも共有しましょう。そして、その集大成として控訴理由書が完成するように、これから「みんなで作る控訴理由書」の取り組みに励みたいと思います。
2021年3月14日日曜日
2021.3.15 控訴状の提出
以下はその控訴状の冒頭頁です。
控訴に当たって、改めて、3.11の声明で表明した以下の決意を皆さんと共有したいと思います。
また、明日の控訴状提出に福島地裁に参加できる方は奮ってご参加下さい。
「この国では、福島原発事故を契機に、最悪の毒物のひとつとされる放射性物質に対する規制が大幅に緩められるという驚くべき事態が進行し、その動きは現在も続いています。
低線量被ばくや内部被ばくのリスクは無視され、「被ばくは可能な限り少なくするべきだ」という、おそらく福島原発事故前は誰もが否定しなかった被ばく問題の大原則すら捨て去られそうです。
子どもたちや将来の世代に対する責任として、小さい声であっても、この国のありように異議の申し立てを続けていく覚悟です。」
2021年3月11日木曜日
2021.3.11 控訴の声明
子ども脱被ばく裁判の会 声明
遠藤東路裁判長が主文だけをそそくさと読み上げ、法壇から逃げるように立ち去り、福島地裁玄関前で人々が涙で怒りを爆発させたあの日から10日がたちました。この間、いったんは打ちのめされた原告から、子どもが無用な被ばくさせられた事実をなかったことにはさせられたくない、子どもを守るのは大人の責任だ、このまま終わらせるわけにはいかないとの声が続々と寄せられました。そして、原告団及び弁護団は、仙台高等裁判所に控訴して、子ども脱被ばく裁判の闘いを続ける決断をしました。そのことを、ちょうど10年の節目である本日、2021年3月11日に皆様に表明します。
真の復興と再生は、詳細な調査による被害の正確な把握と対策の実行、責任の明確化と謝罪を抜きにしては実現できないはずです。毒物の被害について、人類は、被害が生じるたびに規制を厳しくしてきました。ところが、この国では、福島原発事故を契機に、最悪の毒物のひとつとされる放射性物質に対する規制が大幅に緩められるという驚くべき事態が進行し、その動きは現在も続いています。
低線量被ばくや内部被ばくのリスクは無視され、「被ばくは可能な限り少なくするべきだ」という、おそらく福島原発事故前は誰もが否定しなかった被ばく問題の大原則すら捨て去られそうです。
子どもたちや将来の世代に対する責任として、小さい声であっても、この国のありように異議の申し立てを続けていく覚悟です。これからも、引き続き、ご支援をお願いいたします。
2021年3月11日
子ども脱被ばく裁判の会(原告団 弁護団 支援団一同)
2021年3月8日月曜日
2021.3.3 子ども脱被ばく裁判一審判決(福島地裁2021.3.1)の評価
2021.3.3
子ども脱被ばく裁判一審判決(福島地裁2021.3.1)の評価
弁護団共同代表 井 戸 謙 一
1 原告の皆様、支援者の皆様、今回の判決は大変残念な結果に終わりました。言渡し終了後、多くの皆様が裁判所に怒りをぶつけられたのは当然のことでした。その後、判決全文を検討しましたので、私の評価を申し上げます。
2 この判決は、ICRP、IAEA,UNSCEARの見解を金科玉条の如く取り扱い、これにさえ従っていれば問題ないという考え方に貫かれています。これらの組織が、原子力の積極的な利用を目的とする組織であり、被ばく防護基準も原子力の利用を妨げない限りで設けているにすぎないことは全く顧慮されておらず、したがって、それが人権尊重を基本原理とする日本国憲法下の価値体系に適合するのかという問題意識はかけらもありません。緊急時被ばく状況の参考レベルを年20ミリシーベルト~100ミリシーベルト、現存被ばく状況の参考レベルを年1ミリシーベルト~20ミリシーベルトと定めたICRP2007年勧告は、日本の法律には取り入れられていないのに、まるで「法律」であるかのごとく取り扱われています。
3 学校環境衛生基準
その中で、学校環境衛生基準に放射性物質についての定めが置かれていないことについて、「学校の保健安全の観点からすれば、これについても必要な考慮をすべきことは明らかである」と判示されていることは我々が獲得した成果であると思います。子どもを被ばくから守るためには、子どもの被ばく限度を学校環境衛生基準に定めることは国の義務のはずです。
この点について、判決は、学校環境衛生基準に放射性物質についての定めがない状況では、具体的な措置は、教育委員会の合理的な裁量に委ねられていると述べ、今の環境下で教育をすることについて、教育委員会に裁量権の逸脱、濫用はないとし、20ミリシーベルトで学校を再開したことについても不合理とは言えないとしました。
ここでは、原子力法制の価値判断と日本国憲法下の環境法制の価値判断が正面からぶつかります。環境法においては(学校環境衛生基準も同様)は、放射性物質のような閾値(しきいち)のない毒物の環境基準は、生涯その毒物に晒された場合における健康被害が10万人に1人となるように定められています。それが環境法の価値観なのです。これに対し、原子力法制下で一般公衆の被ばく限度とされている「年1ミリシーベルト」は、生涯(70年間)晒されるとICRPによっても10万人中350人ががん死するレベルです。年20ミリシーベルトであれば、なんと10万人中7000人ががん死します。この決定的な価値観の対立の中で、この判決が原子力法制の価値判断を優先させて採用する理由は、全く示されていません。私たちが最終準備書面において力を入れて書いた論点であるにも関わらずです。
4 セシウム含有不溶性放射性微粒子(CsMP)
CsMPについて、判決は、「現状では科学的に未解明な部分が多く、現時点で従前から想定していた内部被ばくのリスクを超えるリスクの存在を否定できるものではない」と述べ、「今後も、その健康影響のリスクを十分に解明する必要がある」ことは認めました。しかし、「放射性微粒子が有意な割合で存在するのか、土壌に沈着した放射性微粒子が有意な割合で大気中に再浮遊するのか、科学的に解明されているとはいえない」としつつ、「有意に存在するのか、有意な割合で再浮遊するのか科学的に解明されてない。」とし(微粒子の割合や再浮遊することについて、原告側から提出した論文は無視されています。)、ICRPが、従前ホットパーティクル(プルトニウム粒子)の危険性を否定していたことから、「現段階において、ICRPの勧告に依拠した放射線防護措置を講じることが直ちに不合理ではない」と断じました。ICRP勧告は、セシウムが不溶性粒子として体内に入ることは想定していません。科学的にはっきりするまで対策を採らなくてもいいというのですから、それは、子どもたちを実験台にする考え方であり、許されません。
5 福島県県民健康調査
判決は、福島県県民健康調査について、過剰診断論は採用していませんが、スクリーニング効果論が「現時点で直ちに不合理であるとはいえない。」とし、発生している小児甲状腺がんが被ばく由来であるとの考え方を退けました。報告対象外の手術例(経過観察中の子どもから発症した甲状腺がん)については、この存在が「県民健康調査の甲状腺検査の結果を評価する際に具体的にどのように影響するのかは別途検討を要する」けれども、「現時点において具体的な影響があると認めるに足りる的確な証拠はない。」としています。報告対象外の手術例が何例あるか分からないのに、スクリーニング効果論が不合理であるとはいえないとする判断は、不合理というしかありません。
6 安定ヨウ素剤の投与指標
私たちが、平成14年に山下氏を委員長とする委員会が、安定ヨウ素剤の投与指標を小児甲状腺等価線量100ミリシーベルトに据え置いた点の不合理を主張したことに対して、判決は、「不合理とは言えない」としましたが、私たちが強く主張した点、すなわち、そのリスク・ベネフィット計算におけるリスク数値として、ポーランドにおける子どもの副作用数ではなく、大人の副作用数を採用した不合理性については、全く触れておらず、完全に無視されました。
7 山下発言について
山下俊一氏の安全宣伝については、「誤解を招く」「問題があるとの指摘をうけてもやむを得ない」「より適切な説明の仕方があった」「不適切であるとの批判もありうる」などと評価しつつ、「県が訂正した」「イメージ的に分かりやすく説明するためのいわば例え」「多くの住民が福島県外に避難することを回避する意図があったと認めるに足る証拠はない」「積極的に誤解を与えようとする意図まではうかがわれず」等と述べて、結局、すべて免罪してしまいました。山下氏の苦しいうわべだけの弁解をそのまま採用した安易な判断です。
8 原告の皆さんが苦しい闘いを続け、多くの支援者の方々が懸命に支援してきていただいた結果がこれでは、到底納得できるものではありません。被ばく問題の原則は、「可能な限り被ばくは避けたほうがいい」です。ICRPですら、LNTモデルを採用し、いくら低線量であっても、その線量に応じた健康リスクがあることを認めています。一般公衆の被ばく限度年1ミリシーベルトすら、安全値ではなく、がまん値でしかありません。少しでも被ばくを避けようとする営みは、正しい営みとして積極的に評価されなければならず、これに対する妨害は許されません。
「被ばくを避ける権利」をこの国において認めさせるための闘いは、これからも続きます。
以上
2021.3.1 子ども脱被ばく裁判 第一審判決
・別紙2 代理人目録
・別紙3(争点に対する原告らの主張)
・別紙4(争点に対する被告国の主張)
・別紙5(争点に対する被告県の主張)
・別紙6(争点に対する本件行訴被告らの主張)
・別紙7 略語表
裁判記録には,これまでの記録を載せています。
証拠説明書や証拠についてはこちらから⇒裁判資料(証拠)